様々なニーズに応える中華街点心の最高峰
中華街に約200店ある中華料理店の中でも歴史が深く、日本の点心発展に大きく貢献しているのが「菜香新館」。大通りから一本入った上海路沿いにある5階建ての建物の同店。 今から20年以上前の「旧館」時代は、小さいながらも飲茶が評判で行列が途切れることのない人気店。その横浜中華街の点心の最高峰とも言われる味はそのままに、約400席もの席を有するのが「菜香新館」だ。
定番の小籠包や飲茶から芸能人一押しの蒸しクレープまで、メニューを見ながら気になる点心をアラカルトで注文するのが「はまてなし」編集部おすすめの楽しみ方。平日は比較的スムーズに入れるが、人気店のため休日はオープン前からの行列になるので電話かインターネットでの予約の上来店しよう。
シーンや相手に合わせて異なる5フロア
ちょっとしたホテルのようなロビーとエレベーターに乗って、目的のフロアへ。各階はそれぞれ趣が異なる装飾となっており、中華料理の定番の円卓はもちろん、テーブルやボックス席、カフェを思わせる内装など、5フロアの中で、デートや接待会食、家族や友人同士、大人数などどのようなシーンにも対応できる。特筆すべきは完全個室の和室フロア。中華料理店では珍しいが、「日本人の風習・慣習にあった部屋 を」というオーナーの意向だそうだ。小さいお子さんがいるご家族でも周りを気にせず食事が出来ると好評だそう。
創意工夫を凝らした最高峰の点心をいただく
食前のジャスミン茶でのどを潤したら、いよいよ点心タイム。
一言で点心と言っても焼売、蒸し餃子、饅頭、春巻、小籠包など種類は多彩。特に小籠包などはここ十年程で一般的になってきた点心だが「菜香」ではその遥か前より定番メニューだったとのこと。まさに横浜の点心文化の発展を担って来た「菜香」の今のオススメは?とうかがうと、「えび入り蒸しクレープ」をおすすめ頂き、オーダー。甘辛いタレと腸粉(チョンフン)を使って作ったつやつやの皮とエビの相性が絶妙。味わったことのない皮のモチモチとした食感はテレビの取材で来店した芸能人やレポーターの皆さんが一同驚かれるんだとか。
また、「菜香」定番の「元祖えびのウエハース巻き揚げ」は軽くてサクサクのウエハースの中からぎっしりとエビがのぞく。こういったユニークな名物料理を作り続けている「菜香」から、第二第三の小籠包が出る日も近いだろう。
香港、横浜中華街の文化を継承、創造する。
中国広東省の料理をルーツにもつ「菜香」。
料理人がしのぎを削る街香港からコックが1960年代に来日したことが同店の誕生のきっかけとなった。現在もチーフや店長などは香港出身者が多く、広東・香港の飲茶文化を日本に広める活動に貢献している。1970年代の香港ブームやバブルで横浜中華街や同店も勢いを拡大した一方、バブル崩壊後の近年は安価な食べ放題や食べ歩きが中華街を台頭し、道は平坦ではなかった。そんな中でも「菜香」は中華街屈指の名店として香港の点心文化を大事にしながら、多くの人の舌を納得させてきた。
昨今も、不安定な要素はないとは言えない。しかしながら、「菜香」スタッフの皆さんは「きちんとお客様に接していけば、大丈夫。今までもそうでしたし、これからもそうでしょう。」と言う。周りを取り巻く環境は変われど「菜香」の味は変わらない。その揺るがない味に対する信頼感があってこその言葉だと感じた。